Page.4 「Bitter or Sweet」

9/9
2459人が本棚に入れています
本棚に追加
/58ページ
    「……甘いな」 「え!?」  僕は思わず、ばっと振り返ってしまった。  彼は、甘い物が苦手だ。  だからわざわざ食べやすいように、ビターチョコレートで作ったのに。  もしかして……間違えた!? 「ああ、いや、チョコは苦いよ?」  慌てる僕に気付いたのか、彼は安心させるように微笑んで、また1つ、チョコを摘んだ。  確かめるようにゆっくりとかみ砕いて、もう一度口を開く。 「でも、甘い」  そうして、いたずらっ子みたいににやりと笑った。  彼は僕の前では、いろんな笑い方をすると思う。  他の人たちに向ける作り笑いとは違った、自然な笑顔。  それはきっと、僕だけのもので……。  また頬の温度が上がりそうで、僕は彼から顔を背けた。 「圭って……ばかだよね」  苦し紛れの照れ隠し。  だけど彼は、僕より一枚も二枚も上手で。 「うん、知ってる」  気にする風でもなく頷いて、またひとつ、にっこりと笑った。 .
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!