Page.1 「迷子」

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     家を飛び出し、駆け出した。  道に迷うのが特技なあいつのおかげで、隣町くらいまでの地形は完璧に頭の中に入っている。  たぶん、あいつが今いるのは俺の家からそう距離のない町中。どうやら今日は電車に乗らずとも迎えに行けそうだ。  かなり走り回った気がする。  あいつが電話で言っていた赤い看板は発見したものの、それは割と高い位置に掲げられているので広い範囲から視認できる。  大通りはすべて見て回ったが、あの背の低い茶髪を見つけることはできなかった。  残すは狭い裏路地だけ。いくら方向音痴だからって、こんな道を入って行くとは思えないが……。  案の定、だ。  何をどう考えればこっちに行ってみようという気が起こるのか、こいつとは付き合いの長い俺にも理解不能だ。 .
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