Page.1 「迷子」

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     暗い裏路地の片隅。  薄汚い壁に寄りかかり、小さくうずくまる姿を見つけた。  顔を伏せているので表情はわからない。 「……莉粋〔りいき〕?」  真正面に立ち、上から見下ろす。  莉粋はゆっくりと顔を上げたかと思うと、素早い動きで立ち上がった。  立ち上がっても俺より頭半分ほど背の低いこいつは、両手で俺の服の裾を掴み、そのまま体を預けてきた。  俺の首筋に顔を埋め、ぼそりと呟く。 「おそい」  僅かに震える声。  生まれつき色素の薄いふわふわの髪を、そっと梳いた。 「悪ぃ。恐かったんだよな」  とりあえず、こいつが安心するまでは頭を撫で続けてやることにしよう。  ああ、それにしても、本当に……。  俺ってこいつに、甘すぎかも知れない。 .
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