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暗い裏路地の片隅。
薄汚い壁に寄りかかり、小さくうずくまる姿を見つけた。
顔を伏せているので表情はわからない。
「……莉粋〔りいき〕?」
真正面に立ち、上から見下ろす。
莉粋はゆっくりと顔を上げたかと思うと、素早い動きで立ち上がった。
立ち上がっても俺より頭半分ほど背の低いこいつは、両手で俺の服の裾を掴み、そのまま体を預けてきた。
俺の首筋に顔を埋め、ぼそりと呟く。
「おそい」
僅かに震える声。
生まれつき色素の薄いふわふわの髪を、そっと梳いた。
「悪ぃ。恐かったんだよな」
とりあえず、こいつが安心するまでは頭を撫で続けてやることにしよう。
ああ、それにしても、本当に……。
俺ってこいつに、甘すぎかも知れない。
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