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「……怒ってるの?」
沈黙が恐くて、恐る恐る聞いてみた。
返されるのは、盛大な溜め息。
彼は扉から背を離して、ベットの上に座り込んだままの僕に近寄ってくる。すっと、音も立てずにベットの傍らに膝を折った。
彼のこういう自然な動作は、とても綺麗で僕は好きだと思う。
「かなり、な。気ぃ使ってんじゃねぇよ。お前らしくもない」
あんな素っ気ないメール、突き放された感じがするだろ。
そう言って、切れ長の目で僕を睨む。けれどその視線は全然恐くなくて、むしろ拗ねた子供みたいだった。
珍しいな、と思った。
何事につけても飄々としている彼が、拗ねてメールもくれなかったなんて。
「莉粋? 何笑ってんだ?」
今度は不思議そうな顔をして聞いてくる彼。
くすくすと笑いながら、それでも僕は首を横に振った。
「ううん、何でもない。……ねぇ、圭?」
「ん、何だ?」
問い返してくる彼の耳に顔を寄せ、ぽつりと呟いた。
「来てくれてありがと」
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