Page.2 「38.6度」

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    「……怒ってるの?」  沈黙が恐くて、恐る恐る聞いてみた。  返されるのは、盛大な溜め息。  彼は扉から背を離して、ベットの上に座り込んだままの僕に近寄ってくる。すっと、音も立てずにベットの傍らに膝を折った。  彼のこういう自然な動作は、とても綺麗で僕は好きだと思う。 「かなり、な。気ぃ使ってんじゃねぇよ。お前らしくもない」  あんな素っ気ないメール、突き放された感じがするだろ。  そう言って、切れ長の目で僕を睨む。けれどその視線は全然恐くなくて、むしろ拗ねた子供みたいだった。  珍しいな、と思った。  何事につけても飄々としている彼が、拗ねてメールもくれなかったなんて。 「莉粋? 何笑ってんだ?」  今度は不思議そうな顔をして聞いてくる彼。  くすくすと笑いながら、それでも僕は首を横に振った。 「ううん、何でもない。……ねぇ、圭?」 「ん、何だ?」  問い返してくる彼の耳に顔を寄せ、ぽつりと呟いた。 「来てくれてありがと」 .
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