一章・そして彼女はグレた

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 嫌々ながらも服を着替え自室を出た時には、既に子爵はエントランスホールに立っていた。 「ベルツ殿! お久しぶりでございます」  グラハムは階段を早足で下り、ベルツ・フォン・ヴィルヘルムに向かい、膝をつき頭を下げた。 「おお、グラハム! 元気そうで何よりだ」  ベルツは跪くグラハムの肩に手をやり、立つようにと呟いた。  ランディール家とヴィルヘルム家は国家成立当時から親交があった。  両家の始祖であるライツ子爵とフレドア男爵は、ラスフィード内乱中のベジエ会戦において相棒のような存在であった。  元々この地を統治していたゲルマニア国から革命軍に寝返った二人は、それにより爵位を与えられ、そのまま革命軍は内乱に勝利した。  内乱中に、敵将を何人か討ち取るなどでライツは男爵から子爵へと昇格し、領地を与えられた二人はお互いに助け合いながらその血統を守ってきたのである。
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