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「ふむ、してグラハムよ。シュターク公爵の娘とはどうなのだ?」
グラハムには許嫁が一人いる。フンベルト・フォン・シュターク公爵が四女、キュラリス・フォン・シュタークである。
確かに容貌は美しい彼女であるが、何せ性格が極めて貴族のそれなのである。
貴族を好まないグラハムは、彼女からたびたび結婚の話が挙がっても、なかなかそれを受けようとはしなかった。
「あいにく、進展はございませぬ。正直言うと、苦手なのです……」
「なるほど、あの家の者ならばいたしかたあるまい。しかし、こうやって断り続けられるのも今の内ではないか?」
「気ままに暮らしていますよ。今のところは。ところで、ご令嬢は?」
「フランディルケか。湖の景色が甚く気に入ったようで外で景色を見ておるよ。どれ、連れ戻してこよう」
グラハムはホールの扉を開けようとするベルツを呼び止めた。
「ベルツ殿、私が参ります。此処でお待ちになってください」
齢55にもなるベルツの体は、長年戦場で痛めつけてきたせいであちこちにがたが来ていた。
今や杖をつかなくては歩けないほどに、歴戦の将校は疲弊していたのだ。
「おお、すまぬな」
ベルツは目を細め、外へと向かうグラハムの背中を見守った。
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