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グラハムは、光を浴びながら佇む彼女の姿にしばし見とれていた。
そして、彼女はグラハムの方へと振り向いた。
やはり、美しい少女である。
女性的な顔立ちで、まるでお人形がそのまま動いているかの様な、そんな錯覚さえ覚えた。
「今日は、とても良いお天気ですね」
風にあおられた前髪を右手で掻き上げながら彼女はぐグラハムの方へと歩いてくる。
「あ、ああ。晴れの時の此処の景色は、どんな風景がよりも素晴らしいと自負している」
幼さの残る顔立ち、まだ16の少女に見とれていたことをグラハムは恥じ、少々狼狽しつつも自分の庭を自慢する。
「貴族に生まれてきたことを何度後悔したか判らんが、その度この景色に慰められたよ」
雄大な山々に囲まれ、太陽の光で煌びやかに輝くこの湖面に、幾度となく励まされてきた。
そのことについては、父に対して唯一抱いた感謝の念であった。
「グラハムさんって、意外とロマンチストなんですね」
そういった彼女はクスクスと笑い、もう一度振り返り、メライフ湖を見据えた。
そんな彼女にグラハムは咳払いを一つし、まるで小うるさい老執事の様に言った。
「ミス・フランディルケ、あまり風に当たってはお体を崩されますぞ。中へお入りください」
彼女はグラハムの方を見、クスリと笑った。
「くすくす、うちの屋敷のセバスチャンの真似事ですか。とてもよく似ていますわ」
「よく似ていると言われるんだ。いっそのこと執事にでもなろうと思うのだが」
「まあ、お戯れを」
そういった二人は顔を見合わせ、同時に笑い合った。
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