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差出人はベルツ・フォン・ヴィルヘルム子爵からの物だった。
先程の説明のとおり、幾ら領地を持ち、領民を従えた貴族でも、逆らえないものは逆らえない。
「子爵の娘とはいえ、花嫁修業の為に何故私が面倒を見なくてはならぬのだ?」
内容はこうだった……
グラハム・フォン・ランディール男爵
拝啓 若草の萌ゆるこの季節にいかがお過ごしでしょうか。
なんて事をジパングルムでは手紙の冒頭で書くらしいな。
まあ気にするな。
さて、本題なのだが、君に折り入って頼みたいことがあるのだ。
実は、私の一人娘フランディルケも十六になる。
息子も生まれず、今フランディルケが結婚をし、息子として迎え入れなければこのヴィルヘルム家は娘の代で終わってしまうのだ。
養子という事も考えたが、血筋が堪えるのは忍びない。
そこで、娘の婚約が決まるまででいい。
どうかフランディルケをランディール家で花嫁修業をさせては貰えないだろうか。
対価は叶えられる範囲なら何でも支払おう。
後生の頼みだ。
良い返事を、期待している。
ベルツ・フォン・ヴィルヘルム
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