プロローグ

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「……入れ」 手紙から視線を逸らさずに命じる。  父から爵位を継いで早四年。若干二十二歳と、若いながらも真面目に責務をこなしてきた。 「失礼します」  入ってきたのはメイド長のルエットであった。  乞食として身を奴していたルエットは、先代、つまりグラハムの父が引き取り、屋敷で養ったのだった。  引き取られてからは思春期真っ盛りなグラハムの世話役を十代ながらにこなし、グラハムが十六歳で成年したときに、父からメイド長の役職を拝名したのだった。  きりっとした印象を与える眼鏡に、黒髪のお下げ。古式奥ゆかしいメイド服を着用したルエットは机に湯気の立ったコーヒーカップをそっと置いた。  お盆を両手で抱きかかえて、男爵の横に立ち手紙を見ようと腰を折った。
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