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「……子爵からの通達でありましょう? それに、私はベルツ様のご子息であるならば信用できます」
むう……とグラハムは唸る。「しかし、いいのか? 一番大変になるのはルエットだぞ?」
ルエットはちらりとグラハムを見やると、くすりと少しだけ笑った。
「あら、私の心配をしてくださるの? お優しゅうございますね、男爵殿」
その言葉に顔を赤らめたグラハムは咳払いを一つ吐いた。
「ゴホッ、あーとにかく、このことは了承したと言うことで良いな?」
「ええ、問題ありませんわ、それに、断る理由もどうせ見つからないのでしょう?」
彼女は優雅に長いスカートを揺らし、ドアの前に立ち、くるりと振り返った。
「手紙は後で取りに来ます。お茶のおかわりがございましたら、何なりとお申し付けください。それでは失礼いたします」
彼女が去った後、グラハムは大きなため息をはき出した。
「やっかい事は、ごめんなんだがなあ……」
そう呟き、彼は山積みになった書類の一角に手をかけたのだった。
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