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「ねえ、これあげる。
だからあたしと付き合って。」
「いーぜ。」
そんなもんだと思ってる、
付き合うなんて。
手渡されたクッキーの入った小袋。可愛くラッピングされてる。
「おまえ、
一円玉くらい軽いのー…。」
いつか仁王に言われた言葉だ。呆れ顔でどこか同情がこもっていた。
なんだ、一円玉って。
俺だって多少なりとも選んでる。
見た目が良くなきゃ、一円玉の俺でもお断りだっつの。
「毎日一緒にいる女が変わるよりはマシだろ。
俺は最低でも一週間は我慢するな。」
偉そうに言うことでもないけど、仁王には言われたくねーもん。おまえの方がよっぽど質が悪いってこと。
言い返す言葉は見つからないのか、はたまたさらに俺に呆れたのか、仁王の視線はどこか遠くを見つめていた。
そして再び開いた口は一言残し、フラッとどこかに消えてった。
「俺はもう、
たった一人を見つけた。
…おまえはどうする?」
4月半ばで肌寒いくらいなのに、うっすら汗をかいたような気がした。
それと、ほんの少しの焦燥感。
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