ACT,1

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もうすぐ5月だってのに空気は少しばかり冷たかった。思いっきり吸い込むと胸がひんやりして頭が冴えた。 「何してんだよ、俺は…。」 一人で呟くのはなかなか虚しいもんだ。 校庭に佇む、もちろん誰もいるわけない。授業中だし。 近くにあった大きな木の下にドカッと腰を下ろすと睡魔に襲われた。瞼を閉じるまで眠気すら感じなかったってのに。 いつの間にか夢の中だった。 ザッザッザッ、 何かを掘り返すような妙な音で目が覚めた。 どれくらい寝てた?校舎の外壁に掛かった時計を見るとちょうど昼休み。かれこれ2、3時間は経っていた。 ふあっと欠伸をすると目の前に変なやつがいた。 なんだ…こいつ…? 完全防備ってこういうこと言うんだろうなって一人納得した。 幅広の麦わら帽、タオルを首に巻いている。上下長袖の体育着を着てることから、うちの生徒に間違いはないと思う。軍手をはめた手にはスコップを握り締め、さっきからやけに耳に入る妙な音を立てている。 何かの種を植えてるらしい。 変なやつ… とりあえず腹が減った。 立ち上がって校舎へ歩き出すと、音はやんでいた。まあ大して気にしちゃいねえけど。 再び音がし始める頃には、俺はそいつの存在すら忘れていた。 俺の後ろ姿をそいつが見てたってのを俺が知るのは、もっと先の話だ。
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