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購買で適当に買ったパンを机の上に置いて、ガタッと勢いよく椅子に座ると何か脱力感。
別に疲れてるわけじゃねえ。
「あっ、丸井先輩!」
教室の後ろの入口付近にワカメ頭が立っている。3年の教室だってのに堂々と入ってくるから、こいつらしいなとか思った。
「んだよぃ?」
「明日なんスけど、何か予定あります!?」
「…明日………別に何もねえけど…」
「じゃあ映画行きましょう!俺見たいのあって…」
「あ?…仁王と行くんじゃねえのか?」
こないだ部活が終わった後、2人で話しているのを聞いた気がした。
「…それが、仁王先輩デートらしくて。」
はあなんてため息ついて肩を落とす赤也、その言葉に軽く引っ掛かるもんがあった。
デート………そういえばあいつ、たった一人を見つけたんだったか。
「何が悲しくて男同士で映画なんか…」
赤也の目を見て言葉が詰まる。何だよ、餌を目の前におあずけくらったような犬みたいな目…キュンときた。いや、まじちょっとだけな。ほんのちょっとだけ!
「ったく、仕方ねえなー…」
「っしゃあ!さすが丸井先輩!明日駅前に10時集合っスよ!!」
忘れないでくださいねっとでっかく手を振って赤也は教室を出ていった。嬉しそうだなーなんて半分呆れ気味に、手に持っていたパンをかじる。
そういえば…仁王はいない。
あいつの行動は謎が多いからいちいち気にしちゃいないが、なんかいらいらしなくもなかった。
最愛の彼女が出来たあいつに少なからず羨ましいとか思ってんのかな、俺は。
今日は食っても食っても満たされる気がしない。
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