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家の奥にいるおじさんにも挨拶して、ラクシュを振り切る様に外に出た。
本当は別にそこまで散らかってはいない。だけど家には帰らなきゃと思った。
私以外誰も帰ってこない家だけど、私が帰れる唯一の家だから。
傘をさして歩いていると、前から子猫が近づいてきたのが分かった。
「お前この雨の中歩いてたら風邪引くよ。おいで」
子猫は小さく鳴くと、私の腕の中に収まった。寒かったからだろうか震えている。
「お前も一人なの?だったらウチにおいで?
…あれ?お前オッドアイなんだね。片方は私の髪と同じ金色だ」
子猫を抱えて立ち上がろうとした時、子猫は腕の中から飛び降りて走りだした。暫く走った所で後ろを振り向いて立ち止まった。
「ちょっと待って!何処に行くの?」
私が近づくとまた走り出し、少し離れると立ち止まった。…まるで私を待っているみたいに。
それを何度か繰り返すと、子猫は路地の陰に入り込み、ニャーと大きく鳴いた。私も後を追ってみると、其処には人が座り込んでいた。
一瞬だけ目が合った。その人の目は子猫と同じ紅…
その紅に目を奪われた。
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