雨の章~セシア~

4/6
前へ
/95ページ
次へ
けれどその紅は直ぐに瞼の中へと姿を隠した。ハッとしてその人に近寄る。 「大丈夫ですか!?」 返事は無い。恐る恐る触れてみると、体が冷えきっている。 もう一度その人を見つめる。 片手に銃を握りしめ、腹部からは血も流れている。 どう考えても危険な存在。関わらないほうがいいに決まってる。 でも… 「ニャー」 足元では心配そうに見上げる子猫。私は子猫に微笑みかけた。 「この人がお前のご主人様?大丈夫。助けるからね。だからちょっと待ってて?」 私は元来た道を走り出した。 関わらないほうがいい。それは分かってる。でも… あの紅に囚われてしまったから… 私はラクシュを連れて元の場所へと戻ってきた。子猫もその人も同じ体勢で待っていた。 「この人を私の家に運ぶの手伝って!」 「はぁ!?マジかよ!こんな危なそうな奴ほっとけよ!」 ラクシュの言う事はもっともかもしれない。私を心配して言ってくれてるのだという事も分かる。でも、これは譲れない。 「運んで」 「…俺の家じゃ駄目なのか?」  
/95ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加