雨の章~セシア~

5/6
前へ
/95ページ
次へ
私は黙って頷いた。見るからに怪しいこの人を助けたいのは私のエゴ。だからラクシュの家族たちに迷惑はかけられない。 ラクシュはハァとため息をついた。 「…本当、昔っから言いだしたら聞かないんだもんな。こんな危なそうな奴を。まぁ怪我してるし…。 分かったよ。セシアの家に運ぶな」 「ありがとう」 それからは急いで事を進めた。 家に着いてからお医者様を呼びに行って、手当てしてもらって着替えさせて… 一段落ついた頃には、もう空が白んできていた。いつの間にかあの激しい雨も通り過ぎていた。 「ごめんねラクシュ。こんな時間迄付き合わせて…。今日も学校なんだよね?」 今更ながら凄く申し訳ない気持ちになり、ラクシュに謝った。けれどラクシュは微笑みを返してくれた。 「バーカ。徹夜とかよくするから気にすんな。授業中に寝ればいいんだし」 「…それは駄目じゃない」 私達は顔を見合わせて笑った。  
/95ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加