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激しい雨の中、俺はひたすら走っていた。追手を撒く為に。
他のエリアとの抗争中。一瞬の隙で深手を負ってしまった。今もその傷は熱を持っていて、血が流れている。
「くっ…!」
傷に激痛が走り、思わず膝をつく。もうこれ以上走るのは無理な様だ。力を振り絞り、物陰へと移動する。
銃を構え耳をすませるが、人の気配はしない。
…何とか撒けたか。
安堵の息をついた。しかし以前と傷は痛み、どんどんと血は失われていく。
…俺は此処で死ぬのかな。それもいいかもしれない。
別にどうしても生きたいわけじゃない。俺がいなくなっても奴らはやっていけるだろう。
空を見上げ、雨を顔に浴びる。少し長く伸びた髪が顔から離れ、滴を落とす。
雨はいいな。俺の流れてる血も、流した血も全て洗い流してくれる。
気配を感じ足元を見ると、子猫が擦り寄ってきていた。
「お前ノラか?」
それに答えるように、か細いながらも甲高い声で鳴いた。
「そうか…」
子猫を抱き上げ、自分のコートで雨が当たらない様に隠してやる。
「お前は男かな、女かな?」
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