6人が本棚に入れています
本棚に追加
/95ページ
子猫の顔をよく見ると、ある事に気が付いた。
「お前オッドアイか」
左右の目の色が違うオッドアイ。暗くてよく見えないが、街灯へ向けて確かめてみる。片方は光を受けて金色に光っていて、もう片方は…
「お前の目も紅か?
…紅い目の奴は捨てられるのかもな」
頭がクラクラとして、眠気が押し寄せてくる。どうやら熱も出てきたようだ。
もう一度子猫を撫でると、腕の中から下ろした。
「俺といるとお前まで冷たくなる。行きな」
子猫は動こうとせずに、もう一度膝の上に乗ろうと足によじ登ろうとしていた。
「駄目だ。お前は生きろ」
子猫は名残惜しそうに一鳴きすると、何処かへと消えていった。
子猫を見送って直ぐに視界がぼやけてきた。
もう終わりだと思うが、死は怖くない。今まで数えきれない程の死を身近で見て自分が与えてもきたのに、それを怖いと思う事はおかしいだろう。
「ちょっと待って!何処に行くの?」
バシャバシャと雨道を歩く音と共に、女の声が聞こえてきた。此方に向かって来ているようだ。
最初のコメントを投稿しよう!