雨の章~紅~

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子猫の顔をよく見ると、ある事に気が付いた。 「お前オッドアイか」 左右の目の色が違うオッドアイ。暗くてよく見えないが、街灯へ向けて確かめてみる。片方は光を受けて金色に光っていて、もう片方は… 「お前の目も紅か? …紅い目の奴は捨てられるのかもな」 頭がクラクラとして、眠気が押し寄せてくる。どうやら熱も出てきたようだ。 もう一度子猫を撫でると、腕の中から下ろした。 「俺といるとお前まで冷たくなる。行きな」 子猫は動こうとせずに、もう一度膝の上に乗ろうと足によじ登ろうとしていた。 「駄目だ。お前は生きろ」 子猫は名残惜しそうに一鳴きすると、何処かへと消えていった。 子猫を見送って直ぐに視界がぼやけてきた。 もう終わりだと思うが、死は怖くない。今まで数えきれない程の死を身近で見て自分が与えてもきたのに、それを怖いと思う事はおかしいだろう。 「ちょっと待って!何処に行くの?」 バシャバシャと雨道を歩く音と共に、女の声が聞こえてきた。此方に向かって来ているようだ。  
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