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わざと低めの声で言ってやり、そのまま突き飛ばすようにレンデュリックから手を放す。
レンデュリックは弾みで2、3歩後退り、ゲホゲホと咳き込んだ。
「お…、思い上がりも大概になさるのですな、バイルシュミット卿───いや、プロイセン!」
思わず眉間に力が入る。
「"我がドイツ"に縋る事で、辛うじて存在成し得ている身の上で、我らが偉大なる指導者、アドルフ・ヒトラーを侮辱するとはおこがましい!!」
「───おい」
呼び掛けに対する反応を待たず、気付いた時には俺の脚はレンデュリックの腹を華麗に蹴り飛ばしており
奴は天幕の外に吹っ飛んで昏倒した。
「レンデュリック大将!?」
「どうなさいました、大将!」
慌てた様子でレンデュリックに兵士が2人、駆け寄って来た。
気を失っている奴を介抱しながら、その内の1人が困惑した表情で俺を見上げる。
「よお、そこの」
「は…ハッ!」
「そいつが起きたら言っといてくれ。万が一にでも俺様抜きでヘルシンキ落とせたら、全部引っ括めて詫びてやる…ってよぉ」
瞬間、ビシリと音が鳴りそうな程、兵士の表情が凍りついた。
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