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気が付くとドアを閉めていた。壁に手をつき、深く息を吐く。堅い束縛から、ようやく解放されたような気分だ。僕は何かを振り払うように小さく頭を振り、自室へ戻った。激しい運動をした後のように、全身に力が入らない。気を抜けば膝が笑い始めそうだった。
鞄を引き摺りながら部屋に辿り着くと、すぐにカーテンを閉めた。暗くなった窓に、怯えた顔の僕が映る。慌てて窓に背を向けて目を落とすと、親友から受け取った鞄が目に入った。手に取って中身を確認する。入れ方は少し雑だが、必要なものは全て揃っていた。僕は鞄を机の上に放り投げて、横を向きに椅子に座った。僕は何を疑っているのだ。
親友のことが、ますます分からなくなっていた。僕を気遣いながら話す顔には、いつもの明るい色が差していて、とても彼が僕に嫌悪感を抱いているとは思えない。
だがもうそれが根拠にならないことは自明だった。僕は今までただの一度も、彼を疑うことなど無かったのだから。
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