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「兄さん遅いですね」
時計を見るなり湊は恋に話しかけた。
精神的にキツいのか
俯いた恋は携帯を握って「うん……そうだね…」としか頷かない。
時刻は21時を過ぎた頃だった。
湊は恋の姿を見ると悲しくなってきた。
自分自身が何も出来ないこと、奨に連絡が繋がらないこと……等々と理由は沢山あった。
だが、湊を一番悲しくさせたのは恋だった。
ずっと暗い表情で今でも泣きそうな顔を恋はしていた。そして彼女は携帯を開くと何度も奨の携帯に電話をかけている。
(恋ちゃん……もうやめて……も…うやめてよ……)
その光景を見る度に湊は辛くなり、心の中で叫んだ。
その叫びが届いたのか
リビングに八雲と詩音が戻ってきた。
「父さん…母さん……?」
さっきまで泣いていたのか、詩音の目は赤く腫れていた。
だが八雲と詩音は複雑そうな表情で2人の前に立っている。
その表情から奨を気遣ったり、心配したりしているモノではなく後悔と自責の念を感じさせるモノだった。
理由を聞いても話してはくれないのだろう、と思った湊は聞かないことにした。
恋はただ呆然としている。
そんな彼女に八雲は優しく話し掛けた。
「今日はもう遅いから泊まっていきなさい。部屋は奨のを使っていいからね」と。
その言葉に恋は我慢していた涙をポロポロと零し、その場で泣き崩れた。
そんな彼女を詩音は優しく抱き締めてあげたのだった。
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