新春

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『ふーん…、好きな人に告白する勇気を出す後押しに、魔術に頼る人は、それだけ多いって事ね』 『らしいね、だがまあ…告白するならストレートに言った方が早いよ、魔術なら成功しても、相手と仲良くなる縁が結ばれるまで時間がかかるし、結果は「当たって砕けても」…、悩み続けるよりはサッパリするんじゃない?』 『いや…「当たって砕けたくないから」魔術に頼ってでも上手く恋仲になれるよう、お願いするんだと思うけど;』 『それは…そうだな』 全てがそうとは限らないだろうが、基本的には霧島さんが言うとおりだろうなので、俺は素直に頷いて話を終わらせた、…恋愛なんぞ「魔術使い」には大した意味がない、恋人の為に使う時間があるなら、何かしらの魔術具を作っている方が、よほど有意義な時間だ。 『さて、今日はこのくらいで終わるとするか』 時計を見ると夜の10時を回っている、そろそろ切り上げないと明日がツラい、まして霧島さんは学校に遅刻しないよう、夏よりも早くバスに乗らなければならない、少し暖かくなってきたとは言え、まだ雪が降る時はある、朝に雪が積もっていたらバスが遅くなる可能性は高く、そうしたら霧島さんもアウト…遅刻が決定してしまう。 『うん、私もちょっと眠いし…じゃあ、おやすみなさい』 『おやすみ~』 俺の返事を聞くと、霧島さんは魔術書と護符を持って立ち上がり、「じゃあね」と手を振りながら部屋から出て行った。 それから十分くらい経ってから、俺も寝る事にした。 『そろそろ霧島さんの「師匠」をやるのも終わりに近いな…』 そう独り言を言いつつ、布団の中に潜った。
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