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『ただいま』
オレは玄関のドアを開いて、帰宅を告げる。
『お帰りなさい』
『ただいま母さん…柚実の様子はどう?』
『……………』
オレの言葉に顔を曇らせる母さん…、柚実はオレの一つ年下の妹で、今年で高校一年になる。
『ちょっと声をかけてくる』
オレは母さんにそう言って、自室と妹の部屋が在る二階へと上がり、そのまま隣の部屋のドアをノックした。
『柚実、兄ちゃんだ』
『…………………何?』
ドアの向こうから、妹の疲れた声色の返事が聞こえてくる。
『いや、今日も学校を休んだのかと思ってよ』
『だから、何回も言ってるでしょ!あいつが出てくるのよ!学校でも、その辺の道でも…どこにだって!』
柚実はオレの言葉を聞いて、かなり怒った口調で言い返してきた。
『そうは言っても、あいつは死んだんだそ?正月早々に事故で…』
柚実は去年の冬…いや秋の終わりぐらいに、別の学校に通う男子に、交際を申し込まれていたらしい、悪い男では無かったらしいのだが、かと言って好みでも無く、丁重に断ったらしいのだが、その男は諦められなかったのか、柚実が帰宅するまでの道の途中で待ち伏せていたり、学校にまで現れては「どうして付き合ってくれないんだ」と執拗につけ回した、いわゆるストーカー野郎だった。
事情を聞いて俺が学校へ迎えに行くようになってからは、あまり姿を見せなくなっていたが、後をつけて自宅前に佇んで見張っている事もあった。
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