始まり

5/9

75人が本棚に入れています
本棚に追加
/112ページ
そんな時はオレがバットを持って家を飛び出した、するとソイツは一目散に逃げてゆく、唯一は電話をしてこなかった所が幸いだった、家は電話帳に電話番号を載せないよう頼んでおいたので、そこらで簡単に調べる事は出来ない。 柚実はすっかり怯えて家から出なくなってしまったのが去年の冬、雪がチラチラと降り始めた頃だ…それから1ヶ月くらい経ったクリスマスの日、オレは2人の友達と一緒に街に出かけた、もちろん柚実も誘った、オレと一緒に合わせて四人もいれば、あのストーカー野郎も近寄ってはこないだろう、少なくとも今日はその様子を見て引き上げると考えていた、柚実も安心したのか久しぶりの外出でとても楽しんでくれていた、しかし…それでちょっとした油断が生まれてしまった、ほんの少しオレと友達が、柚実の側を離れていた時にアイツが現れた、柚実の悲鳴にオレと友達は振り向くと、アイツが柚実の腕を掴んで強引に連れ去ろうとしていたのだ。 『この野郎!?』 『待ちやがれ!』 友達はすぐに走り出して、柚実を助けに向かってくれた、オレもほんの一瞬だが遅れて後を追う。 『畜生!!』 アイツはこちらに気がつくと、柚実の腕を放して逃げ出した。 『逃がすかよ!』 友達がそのまま追ってゆき、柚実に駆け寄った。 『大丈夫か!柚実!』 『……………』 青ざめた顔をして柚実は返事はせず震えながら、オレの腕にしがみついているだけだった。
/112ページ

最初のコメントを投稿しよう!

75人が本棚に入れています
本棚に追加