75人が本棚に入れています
本棚に追加
/112ページ
『兄さん!』
しがみついてくる柚実を支えながら、オレはアイツの幽霊…に、怒鳴りつけた。
『テメエ死んでまで柚実の所に来るんじゃねえ!しつこいんだよ!とっととあの世に行きやがれ!』
幽霊を見たと言う恐怖は怒りで失せていた、アイツはオレがそう怒鳴ると静かにオレと柚実を見ていた表情が、まるで塗り替えたかのような怒りに満ちた。
(柚実…俺のものだ…一緒につれていく、必ず!!)
頭の中に直接響いてくるようなアイツの声が聞こえてくる、と、同時に柚実の部屋全体が、ガタガタと地震のように震え出す。
『っ…ぐ…』
オレは再び恐怖に飲まれて怒鳴る事も出来ず、口から言葉が出なかった。
そんな状態が何分か何十分経ったのか分からない…が、次第に静まり、揺れは納まった、もう柚実の部屋にアイツの姿は無い、けどアイツの顔…あれは本気だった、マジで柚実を連れて行く気だとオレは思った。
………………………………………………………………
『力になる…か…』
さっき雲野はそう言ってくれたが、相手が幽霊じゃケンカの強さは関係ないだろう、やはりお祓いに行くべきだ、けど…今までのは大して効き目はなかった。
既に柚実を連れて「お祓い」を何度かしてもらっていた、そうすると何日間かは全く静かなのだが、一週間もしない内に夜中に柚実の悲鳴が聞こえてくる、つまりアイツが現れる、根本的な解決になってないのだ。
『どうすりゃいいんだ…』
おそらく、また今日もアイツは来る…そう考えると、気分は一層憂鬱になってくる。
…………………………………………………………
最初のコメントを投稿しよう!