新春

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『でも、霧島さんは上手い方だと思うけど?』 『え?そ…そうかな?』 『少なくとも俺よりは』 俺は自分が描いた護符を思い出す、見本があるのだからある程度は綺麗だ、しかし丁寧さに欠ける為に、どことなく歪な感じがあるのは否定出来ない、それに比べ霧島さんの護符は、外周の円も美しい弧を描き、円内に描く図やヘブライ語も見やすいくらいだ、少なくとも俺のヘブライ語よりは文字に見える。 『……………』 霧島さんは無言で手を動かし始めた、そして細かいアルファベットをゆっくり、丁寧に書き連ねてゆく。 弟子たる相手の失敗を注意しても、上手い所は誉めるべきなのだ…魔術そのものでは無いが、実際に霧島さんの護符の出来栄えはなかなかである、…一応説明しておくと、魔術に関する符は二種類ある、持ち主を防護するアミュレット(護符)、持ち主に幸運を招くタリスマン(呪符)があるが、呼び方こそ異なるが、やってる事は同じであり、差違は殆ど無いものでしかない、ただし「殆ど」と表記した通り、僅かな違いがある…アミュレットの効力は「目的の範囲内に含まれる内の、そこから派生する可能性がある結果」へと流れる事がある、つまり結果に至る筋道が幾つかあった場合、魔術師の思惑とは異なる道筋で、目的としていた結果に至る場合があると言う。
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