たどり着く言葉…

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たどり着く言葉…

ごく最近のことです。 時間潰しに喫茶店に入りました。そういえばここ何年も喫茶店なんて入った記憶がありません。ていうか、喫茶店自体あまり見かけなくなりました。今やネットカフェが主流なのでしょう。これも時代の流れなのでしょうか。そんなことはさておき、ある日、何年か振りに喫茶店に入りました。その時かすかに耳に入ってきたのが、少し離れた席で話していたカップルの会話。それは、あきらかに別れ話をしている感じ、というか、間違いなく別れ話でした。その内容をこの場で書くということはしませんが、ようは深刻な別れ話です。二人の会話の終盤、しばらくの沈黙の後で、女性のほうから「じゃあね…いろいろとありがとう。」と言って席を立つ。男性も「ごめんね、元気で…ありがとう。」といって小さく手を挙げる。 私はこの時思ったんです。 お互いがどんな付き合い方をしたにしろ、何が原因で別れる事になったにしても、“ありがとう”の言葉が素直に発せられれば、それはいい恋をしたという証なのではないかなって。例えば「あなたは女癖悪かった、だけど、今まで楽しかった、ありがとう。」とか、たとえ嫌いになって別れるにしても、二人が付き合った期間、一瞬だけかもしれないけれど楽しい時を過ごしたに違いないはずです。それは人によって様々ですが、少なくとも、いい思い出のまったくなかったカップルなんていないはず。別れ間際に“ありがとう” きっと自分たちの付き合った期間が無駄ではなかったという証ではないでしょうか。 あの日喫茶店で見たカップルが気のせいか別れ際少し笑顔だったのを見て私はそう確信しました。 たどり着く言葉は“ありがとう” そういえば、恋愛だけでなく、人生においてのたどり着く言葉も“ありがとう”かなって思います。 何年か前にに祖母が他界したときに、棺の中の祖母に向かってお袋が「ありがとう!」って言いました。 実は私、まだお袋に向かって、心から「ありがとう!」って言ってない気がします。 なんだか他人と違って水くさいというか、だから気持ちはあっても声に出して言った事がないんです。 恋愛だけでなく人生においても、たどり着くのは“ありがとう”の言葉、“ありがとう”の気持ちなのかなって、ごく最近、そう思うようになりました。
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