背中合わせの心

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背中合わせの心

~これは、ある女性の十年間にわたる恋の話です。(フィクションです。)~ あの頃の私は自由に、そして気ままに、恋をしていました。 遠くから見つめる貴方の視線に気が付きながらも… 貴方はとてもいい人だった。 友達や私にとっても。 けれども私が惹かれた男は違ってた。 私は彼を選んだ。 やがて彼との恋に狂った私は、家を出る決心を… そんな私を貴方は小雨が降る中を駅まで送ってくれた。 貴方に振り向くことなく、ありがとうの言葉もいわずに列車に消えて行くわがままなあの頃の私を、貴方はただ濡れながら見ていた。 動き出した列車の連結の影で、彼のコートの湯気を見たときに思いました。 人生一度位は、自分のレールは自分で引きたいと… たとえそれが不幸行きの“悲しき運命”という名前の列車でも。 彼がいい人なのか、まだわからない、映画ならこの場面でハッピーエンドで終わるけれど、心の中でかすかに感じていた、彼は決して幸せが似合わない人だと。 でも、あの頃の私は幸せを求めるよりも、むしろ不幸せになる為の自由が欲しかった。 今思えばわがままに見えるけど、一度きりの人生、私は悔やんでいない。
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