憧れていたシチュエーション

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20代前半はキスに凝っていました。 どうしたら理想のキスが出来るのだろうか? ただそればかりを考えていました(笑)。 そこで、ある日思い付いたんです。 理想のキスをするためには理想のシチュエーションが不可欠であると… 考えてみて下さい、当時私は大阪にいました。大阪の場合… 恋人同士が抱き合ってキスをする…大抵、背景には「たこ焼き屋さん」とか「食い倒れ人形」とか…ムードも何もあったもんじゃない(笑)。これでは理想のキスなんて出来るはずがない(笑)。 古いフランス映画のラストにこんなシーンがありました。 パリのシャンゼリゼ通り、有名な凱旋門がバックに見える横断歩道、その横断歩道を挟んで恋人同士がシグナルが青に変わるのを今か今かと待っている。やがてシグナルが青に変わり、お互いに走り出す、横断歩道の真ん中に差し掛かり、そこで抱き合う、そして熱いキスをする、そして女の子の真っ赤なヒールの右足が片仮名の‘レ’の字のように跳ねる… そこでエンドロールが流れ、映画がおわる。 「これや!これしかない!」 ようやく自分の目指す憧れのシチュエーションを見つけたわけです。
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