憧れていたシチュエーション

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しかし、場所は遥かフランスはパリ… 行けるはずがない… 考えました… 何処かに似たような場所は無いものだろうか? それから数年経って、ようやくチャンスが訪れました。 場所は長崎県、ご存知だと思います。そう“オランダ村”です。 先程、前の章で登場した私の知り合いとその彼女、二組のカップルで“オランダ村”に遊びに行った時のことです。私はその知り合いに訳を話して、記念に写真を撮って欲しいとお願いしました。そして自分の彼女にも内容を説明して頼み込みました。すると彼女は…「あほくさっ、でもおもろそうやから ええよ!」…そう、彼女は関西弁丸出しの大阪人です。「おもろそうやから、ええよ!」この言葉が妙に引っ掛かってはいたのですが(笑) そして、いよいよ… 背景の奥にはヨーロッパ調の建物、その手前には赤と黄色のチューリップ畑、そして一番手前にコジャレた噴水が、あたかもそのシーンの為だけにあるかのように佇んでいる。 心の中で「よし!」と呟き、向こう側の彼女に向かってサインを出す、彼女はうなづいて走り出す、そして私も走り出す、ちょうど噴水のところで抱き合う、そしてキスをする、真っ赤なヒールの足が跳ねる」… そうじゃない… 前にも書きましたが、彼女は大阪人… こんな時でも笑いを取る方を選んだ訳です。 気付いた方もいらっしゃるでしょう、彼女の足は片仮名の‘レ’の字に曲がることはなく、‘ト’の字、つまり、真っ正面に…結局は股関を蹴られただけでした。 しかし履いていたハイヒールが脱げて、近くで演技中の大道芸人に当たるとこまでは、さすがの彼女も予想すらしていなかったでしょう(笑)。 数日経って、友人が現像された写真を渡してくれました。 なかなかセンスのある友人だと感心しました。 股関蹴られた瞬間を見逃さずに写しているだけではなく、セピア色で現像していたのです。 セピア色…白黒だと古臭いだけ、カラーだと単なる写真、セピア色…まるで時が止まったような、まるで映画のワンシーンのような… そんな感じがしました。
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