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俺は全速力で走った。
そりゃもう周りの人が引くぐらい走った。
廊下の途中で出会った初老の先生に、眼が合っただけなのに土下座をかまされた事から推測するに、俺の顔面は偉い事になってるんだろう。
あと、先生の土下座が嫌に流動的だったのが印象に残った。
動作の一つ一つが無駄に洗練されていた。
そして、ようやく目の前に見えたのはゴール地点である我がクラス。1年4組。
そのトビラを音速の速さで開き、中へと飛び込む。
「せぇぇぇふぅぅぅ!!!!!!」
よかった。
ぎりぎりで間に合った。
「初日から遅刻か。いい度胸をしている。」
違ったようだ。
俺の後ろから聞こえたその声は、さながら悪魔の囁きの如く頭に響く。
冷や汗を垂らしながら振り向いたその先には、
なんか物凄いグラマーな女性がいた。
長い黒髪をポニーテールにし、白衣を羽織ったその人物は、その端正な顔に深い隈を引っ付けて俺を見下ろしていた。
「………………。」
「ふむ。そうやって睨まれても困るのだがね…」
「いや、これは人相の一部です。貴女こそ隈が凄いっすよ?」
「これは…人相の一部だ。」
いや、嘘つけ。明らかかに不眠症の象徴じゃねーか。
何ともテンションの低いお方だった。
どうやらその女性は自分達の担任らしく、実に面倒臭そうに教卓に移動し、頬杖を付いて座り込む。
というか先生。俺は無視すか。
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