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「願いがあれば、満月の夜に。それも、仲秋の名月(ちゅうしゅうのめいげつ)の時に願うと、嫦娥様が叶えてくれるらしいよ。」
その人は、そう言っていた。
だったら、今夜はまさにうってつけじゃないだろうか。
「私を苦しみから解き放って下さい。」
仲秋の名月は私の願いを聞き入れてくれた。
「見て。もう、末期で苦しかったはずなのに。穏やかな顔をしているわ。」
「本当。それがせめてもの、救いね。安らかに。」
「大丈夫よ。おばあちゃん、大好きな月の夜に亡くなったんですもの。」
「そうね。仲秋の名月の夜に死ねたら…って言っていたものね。」
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