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倒れた少女は、うつむせのまま動かない。
「………」
「お、おい大丈夫か?」
聡も心配そうにしゃがみ込み少女の顔を横から覗き込み抱き起こそうとした。
「だ、だ、だ、大丈夫だよ!」
涙声で、聡の腕を振り払う。
「本当に大丈夫?」
心配そうに今度は、奈美がしゃがみ込む。
しかし、少女は立ち上がりそのまぶたに溜まった涙もそのままに奈美を見つめて。
「お姉ちゃん、ありがとう。」
そう言って両手を奈美に突き出した。
その気丈さに思わず奈美はお盆を少女に渡してしまったが、ハッと我に帰り再びお盆を少女から取り戻す。
「危ないから、お姉ちゃんが持って行ってあげる。
聡、ここお願いね。」
少女は奈美の顔を見上げ、ニッコリと微笑む。
「ありがとう。」
聡と天照を残して奈美は歩き出した。
「お、おい!」
奈美を追いかけ様としたが、列を離れるとまた最後尾にならばなければならない事に気付いた。
「大丈夫ですじゃ、すぐ戻られるでしょう。」
天照にも、宥められ聡は奈美の後を追わなかった。
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