《届けられた物》

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奈美と小さな少女は体育館の片隅に向かって歩く。 「ねぇ、アタシは白木奈美って言うの。あなたは?」 歩きながら少女に話しかける。 「明日香、橘明日香(タチバナアスカ)です!」 小さな少女は、元気に答える。 「そお、明日香ちゃんね。 よろしく、でもすごいね、あんに派手に転んだのに泣かなかった。」 そう言って奈美は明日香の顔を覗き込む。 「パパと約束したの、どんな事があっても泣いたら駄目だって。」 「そうなんだ、偉いね。 パパとママはどこにいるの?」 奈美の言葉に明日香の表情が曇る。 「パパとママとはぐれちゃって、ここにはいないんだ。」 奈美は明日香の言葉を聞いて、しまったと思ったが再び明日香を覗き込んで 「そっか、アタシと同じだ。」 「お姉ちゃんも?」 「そうだよ、でも寂しくないよ。 友達と一緒だから。」 奈美の言葉に曇った表情が晴れる。 「ふーん、明日香も寂しくないよ、おばあちゃんとおばさんが一緒だから。」 「多分、お父さんもお母さんも何処か違う避難所にいるんだよ。」 まるで自分自身に言い聞かせるように奈美は明日香に言った。 「うん、そうだね。」
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