《聖域》

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遠くで雲ぐった排気音が聞こえている。 男は窓際の座席でうたた寝をしていた。 国際線のジャンボ旅客機のファーストクラス。 静かな機内に僅かだが聞こえる排気音が子守唄の様に聞こえていた。 『ガックン!』 「……?」 不意に大きく機体が揺れた。 うたた寝をしていた男は浅い眠りから引き戻される。 「何?」 男の隣の席に座っていた若い女性が不安げに辺りを見回して言った。 目を覚ました男は訝(イブカ)しそうに女性を見た。 『ガックン!ガ、ガ、ガ、』 再び大きく揺れ排気音も先程までの心地好い音とはまるで別物の様に異音を響かせる。 「キャー!!」 大きく揺れた時、数名の女性が悲鳴を上げた。 同時にエアーマスクが頭の上に降って来た。 『ポーン。』 機内アナウンスが響く。 「ただいま当機は悪天候により、不安定な飛行機状態にあります。 お客様におかれましてはしばらくの間、シートベルトの着用をお願いいたします。」 シートベルト着用のランプが点灯した。 男はシートベルトを着用し再び寝ようとした。
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