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それでも、辺りを探して火を興した。
火の周りに遭難者達は集まり、煖を取りながらも怪我人の世話をしたりする者、ただ火を見つめ座り込む者様々だったが皆口数は少なかった。
怪我人の手当も一段落着くと男も火を見つめボーッとしていた。
「よう、あんた何処から来たんだい?」
突然、男は肩を叩かれた。
振り向くと白人の男が立っていた。
「貴方は?」
「俺か?俺はダグラス・モルドレッドってもんだ。」
人懐っこい笑顔を男に向け名乗る。
「ワシは天野照之(アマノテルユキ)と申します。」
「日本人か?中国?どっから来たんだい?」
「日本人ですじゃ、香港から来ました。」
「日本人かぁ~、香港には仕事だったのかい?
俺は気ままな旅の途中だったんだが、とんだ目に遇っちまった。」
天野はダグラスの軽い感じに少し抵抗を感じたが、気さくに話し掛ける彼を嫌いではなかった。
「まぁ、明日か明後日には救助が来るだろうからそれまでは、力を合わせてやろうぜ。
よろしくな!」
そう言ってダグラスは天野に右手を差し出した。
「ああ、こちらこそよろしく。」
差し出された右手を掴み握手をした。
ダグラスは微笑みうなづいて、天野の脇から立ち去って行った。
歩いて行くダグラスを見ながら天野も微笑む。
「不思議な男じゃ。」
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