3人が本棚に入れています
本棚に追加
新しい制服。真っ黒のセーラー服だ。襟には白いライン、胸元には真っ赤なスカーフを、きゅっと結ぶ。鏡の前で、くるりと回ってみる。ずいっと顔を近付けて、ポニーテールにした黒髪を整える。
「今日子ちゃん、遅れるよぉ」
「はぁーい!」
おばあちゃんの声にはっとして、玄関へと急いだ。きっちり整えられている白のスニーカーを履いて、おばあちゃんに向き直る。
「行ってきます!」
「はい、行ってらっしゃい」
ガラガラと扉を開き、第一歩を踏み締めた。今日から黒崎今日子は、梅ヶ丘中学の二年生なのだ。少し先に見える白い校舎を眺め、古いコンクリートの道を歩いた。
見えるのは、連なる山々と、広がる田畑。静かに流れる川に、点々と建つ古い家。川沿いには桜の木が爛漫と咲き誇っていた。
「おーい!今日子ー!」
「あ、えっと……セージ君!」
「そういえば、転校なんだよな!今日子、何年生?」
「二年生、です」
そう言うとセージ君は驚いた顔をした。
「いっこ下!?」
「えっ!じゃあ、先輩なん……ですね」
危うくぎりぎりのところで敬語を付け足す。彼は綺麗に笑った。
最初のコメントを投稿しよう!