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「いいよ、無理に敬語にしなくて」
「え……」
「俺の部活の後輩なんか、呼び捨てにしてくるくらいだよ!」
セージ君は生意気な後輩の真似をした。なんだか可笑しくて、学校に着くまでどれだけ笑っただろう。彼はわざわざ職員室までつれて行ってくれた。
職員室では、担任だという若い女の槇先生に説明を受けた。とても優しくて、自然に緊張が解れていった。
教室に着くまで、あたしは頭の中で何度も自己紹介の練習をした。第一印象が大事。あたしは黒崎今日子。しばらく歩くと、二年一組の文字が見えた。予鈴が鳴る。あたしは静かになった教室へ、槇先生に続いて入っていった。
「みんな、転校生よ!」
先生に促されて、一度教室全体を見渡した。こちらに視線が集まっているのが分かる。
「く、黒崎今日子です。宜しくお願いします!」
軽く頭を下げて、また見渡す。そこで、みんなの表情が固いことに気付いた。みんな、目も口も開けたまま、固まっている。驚愕の表情だ。空気が、張り詰めている。
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