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「え……?」
どうしたらいいか分からずに戸惑っていると、一人の男子生徒が冷や汗を流しながら口を開いた。
「く、黒崎!黒崎だって……」
その一言で空気が弾けた。生徒がみな一斉に口を開く。黒崎、黒崎、黒崎。まるで呪いの呪文。ざわめく教室を、槇先生の凛とした声が制した。
「みんな、静かに!仲良くね!」
あたしは、何を、失敗したのだろうか。指定された席で一人、呆然としているしかなかった。
ホームルームが終わり、先生が教室を出た。その瞬間、また呪いの呪文が囁かれる。黒崎、黒崎、黒崎。囁かれる黒崎という呪い。耐え切れず俯いていると、二人の女子生徒が恐る恐る声をかけてきた。
「黒崎さん……黒崎さんの、お母さんって」
「?」
「う、腕に入れ墨とかあったり、する?」
「え……わかんない、けど」
「お母さんの、名前は?」
なぜそんなことを聞くのだろう。不思議に思いながら、確かに答える。
「皐」
瞬間、教室に叫び声が響いた。
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