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十三歳、春。放浪癖のあるお母さんが急に帰ってきて、爆弾をひとつ。
「離婚した。田舎に帰るよ」
「……え」
苛立った様子のお母さんに唖然としながら、荷物をまとめるその背中を見つめているしかなかった。とぼとぼ歩いて、自室へ向かう。状況がまだ飲み込めないのだ。
「何ボサっとしてんの。早く荷物まとめなさい。もう二度と来ないっての、こんなボロマンション!」
「お、お母さん」
「あーもうイライラする!」
ガツンとお母さんが壁を蹴った。痛そうだ。急かされながらせっせと荷物をまとめる。まだ飲み込めない。
「いい?アンタは今日から黒崎今日子!鈴木なんてダッサイ名前名乗るんじゃないよ!」
「黒崎、今日子……」
「学校も転校。ばあちゃん家で暮らしなさい」
お母さんの旧姓である黒崎を、何度か呟いた。転校しなければいけないのか。ああ、仲良しの友達みんな、お別れしなきゃいけない。お母さんのばか。
放浪癖のあるお母さんは慣れた手つきで荷物を詰めていた。
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