平穏な日常

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 お母さんはさっさと出て行った。またどこか放浪するのだろう。 夜、お父さんが帰ってきた。疲れたような窶れた顔。前より全然元気もない。左の頬が腫れていた。多分、お母さんが。 「すまんなぁ、今日子……すまんなぁ」 「……ううん」 「これ、ばあちゃん家までの切符とお金。地図も持って行きなさい。駅までばあちゃんが迎えに来て下さるそうだから」 「……うん」 「今日子」 「……うん」 「何か困ったら、連絡しなさい。特に、あそこだから……」 「?」  お父さんは思い詰めたような顔をしていた。少し唸って、「きっと、大丈夫だと思うが」なんて一人頷いて、あたしを抱きしめた。  そこでようやく、涙が流れた。 「お父さん、また、連絡するからね。絶対」 「あぁ。すまんなぁ、今日子……」 「あたし、お父さん大好きだからね」 「父さんもだよ」  そして次の日、あたしは一人、田舎へ向かった。
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