3人が本棚に入れています
本棚に追加
お母さんはさっさと出て行った。またどこか放浪するのだろう。 夜、お父さんが帰ってきた。疲れたような窶れた顔。前より全然元気もない。左の頬が腫れていた。多分、お母さんが。
「すまんなぁ、今日子……すまんなぁ」
「……ううん」
「これ、ばあちゃん家までの切符とお金。地図も持って行きなさい。駅までばあちゃんが迎えに来て下さるそうだから」
「……うん」
「今日子」
「……うん」
「何か困ったら、連絡しなさい。特に、あそこだから……」
「?」
お父さんは思い詰めたような顔をしていた。少し唸って、「きっと、大丈夫だと思うが」なんて一人頷いて、あたしを抱きしめた。
そこでようやく、涙が流れた。
「お父さん、また、連絡するからね。絶対」
「あぁ。すまんなぁ、今日子……」
「あたし、お父さん大好きだからね」
「父さんもだよ」
そして次の日、あたしは一人、田舎へ向かった。
最初のコメントを投稿しよう!