平穏な日常

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 なんとかして、無事に田舎へ着いた。お母さんの故郷へ。都内とは全然違って、静かで、風がよく通っていた。空も真っ青。春だからか、緑も綺麗。 「今日子ちゃん」 「あ、お、おばあちゃあん!」  背中の丸い、白髪のおばあちゃんが改札の向こうで待っていた。その姿に安心したのか、改札を出て駆け寄って、強くしがみついた。畑仕事をするせいか、おばあちゃんの足腰はしっかりしている。 「大変だったねぇ。バカな大人たちに振り回されて。さぁさ、お家にいらっしゃい」  軽トラに乗って、おばあちゃんの家まで走った。がたがた、整備されていない今時珍しい道。都内じゃ科学が発展して、こんな古風な風景は見られない。時代を遡ったような気分だ。  窓の外を眺めていると、一つ、不釣り合いな近代的な建物が見えた。真っ黒な、四角い建物。窓もなければ、入口も見えない。四角い建物。 「おばあちゃん、何あれ」 「ん?何だろうねぇ」  おばあちゃんはにこやかに、そうあたしをはぐらかした。
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