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「ウチのばあちゃんから!」
「あ、ありがとうございます」
「俺、川の向こうの白井清治。セージでいいよ」
「すず、あ……黒崎今日子」
「キョーコ!宜しく」
差し出された手を、戸惑いながら握る。男の子の手なんて、全然触れないから緊張する。しかもいきなり、呼び捨てだなんて。
セージ君は手を振って帰って行った。触れた手をじっと見つめ、はっとして野菜を台所に運んだ。ちょうど、おばあちゃんもいた。
「あっおばあちゃん。これ、セージ君が」
「あらあら、いつも悪いねぇ」
今時、近所に野菜のおすそ分けなんてあるんだ。あたしのいたマンションじゃ、隣人なんてほぼ他人だ。関わることなんてまるでなかった。
知らない、新しい世界。
あたしはなんだか、胸の内がわくわくしているのを感じていた。これからの生活に、期待して。
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