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『おはよう~、なんかネクタイ変だね~』
アヤカは笑いながら言うから、徹はまたネクタイを触る。
『そうか?おまえだってリボン変だぞ』
リボンが変というより、ブレザーにチェックのスカート姿がセーラー服よりアヤカが大人見えて、少し戸惑った。
水泳部のエースだっただけあってスタイルもいいし、中学時代は男子、さらには女子にも人気があった。
『そうかな、やっぱりこの制服かわいいよね。それより早く行こう、さっき清田君見かけたし』
アヤカの言う清田とは、徹達と同じ中学の清田 隆(きよた たかし)のことである。
清田は徹と同じバスケ部の部長で、徹がケガをするまでエースの座を争っていた。
徹がケガをしてからは、清田は『エース』から『部長』となり、徹は『幽霊部員』という『光』と『影』位置づけとなっていた。
『そっか、あいつも同じ高校だったっけ。』
まるで他人事のように徹は言った。
中学2年から話していないから仕方がない。
こうやってアヤカと話すのも、正直久しぶりだ。
中学時代は、アヤカはいつも徹に話しかけて来た。
まるで学校まで母親がいるみたいだった。
アヤカは年齢を重ねていくにつれて、徹の母親と仲良くなっている。
桜の花びらが舞い、新しい高校生活を祝ってるようだった。
徹にとっては去年の桜とは、全く違う桜であるような感じだった。
そうしてるうちに『入学式』と書いた立て看板の校門前に着いた。
『徹、自転車置いてクラス見に行こっ!あっ、桜ついてる』
中学生のときは禁止されていたワックスを髪につけたせいか、桜の花びらが頭についてたらしい。
アヤカが背伸びをしてとってくれた。
『徹、その髪型似合うね』
と、桜の花びらを見ながら言った。
『あぁ、そ、そうかな』
アヤカからそんな事言われり準備なんてしてない徹は隙をつかれたような感じに戸惑うとともに、少し嬉しい気もあった。
アヤカは、自然にこういう事を言う。
これが人気の秘訣なのか。
先生の誘導で駐輪場に向かう。
『新入生はこちらに自転車止めて~』
駐輪場に自転車はまだまばらだった。
校舎の3階から、上級生が眺めているのがわかった。
『ねぇ、徹~、早くぅ~』アヤカは今にも走り出しそうな感じで、徹を手招きしてる。
他人から見ればカップルだと思われるんじゃないかななんて、徹はいらぬ心配をしていた。
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