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『今行くよ、そんなに焦んなよ』
自転車の鍵をかけながら徹は言う。
小走りでアヤカの所に行く徹。
『何組かな?徹、同じクラスだったら、お弁当作ってあげようかぁ~?』
アヤカは160cmの背をかがませ、ニヤつきながら175cmの徹の顔を覗き込んだ。
『俺、学食食うから。飯は温かいのが1番だし』
今度こそアヤカの攻撃に怯まないようにと、徹は強気にでた。
しかし顔は照れていた。
少しアヤカの料理も食べてみたい気はしていたが。
『そっかぁ~、残念。』
アヤカは言葉とは裏腹に顔は笑ってた。
ただ、徹の照れた顔が見れただけで満足だったようだ。
そんことしているうちに、クラス分けの紙が貼ってある掲示板に着いた。
人だかりで頭を左右に振って見る。
『徹、発見!1組だね』
アヤカが見た瞬間に言った。
『おまえ、見つけるの早過ぎ。おまえ何組なんだよ。』
アヤカが言ったあと、徹も掲示板を見る。
たしかに1組だった。
『私、4組ぃ~、別々だね。けど清田君と一緒だ』
同じ出身中学の人は、4人いたが徹は誰とも一緒ではなかった。
一つ学年で4組しかない小さな高校でこんな事もあるのかと、ちょっと驚きもあったが、徹は内心ホッとしていた。
過去の自分を知るものは居ない。
新しい自分として生活できる。
あたかも以前に悪いことをしてきたのがなくなる。
大袈裟にいえば犯罪の前科が消える。
そんな感覚に徹はなった。
『じゃ、徹、教室いこっか』
アヤカに手招きされながら、下駄箱の方へ行く。
下駄箱にはすでに名前のプレートが付いていた。
革靴を入れ、真新しい鞄から上履きを出して履くと、
『じゃ、徹またね。私、上だから』
小さな学校なだけに一学年で2組ごとに階が別れてる。
一階は1・2組。
二階は3・4組。
アヤカはすでに二階への階段へ上がってた。
徹も自分のクラスへ歩いていく。
教室の前に立つと、中で座ってる生徒が一斉に見る。
視線に押し返されそうになるが、重い一歩を踏み入れる。
黒板に座席表が貼ってあり、徹は窓側の1番後ろの席だった。
周りを気にせず、一目散にそこの席に向かう。
席に着き窓の外を見る。
校庭がすぐ横にあり、ここなら一年間退屈せずに済みそうだと徹は思った。
机の上に生徒手帳が置いてあった。
『県立青城高等学校』
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