変わらないものと新しいもの

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県立と言っても、周りに私立と進学校の人気高校がありクラス数はギリギリ4クラス編成。 夜にある定時制が県内で貴重な存在らしく、学校は無くならないらしい。 だから夕方18時頃になると、悪そうな奴らが入ってくる。 中には、年配の方々の姿もみられる。 学校横にあるファミレスの広い駐車場で、原付きを乗り回したり、タバコをふかしたりしてるのは大体定時制の奴らであった。 校舎は全日制とは別になってるから、触れ合う事もない。 触れ合うとしたら、共同施設の体育館や校庭くらいだろう。 そんなことを考えて生徒手帳を見ていたら、 『生徒手帳に記入ミスがないか、確認するや』 怒号にも似たような関西弁のドスの効いた声で言われ、徹はびっくりして背筋を伸ばした。 てっきり教員だと思い、教卓を見ても教員の姿は居ない。 『わしや、わし』 横に目をやると廊下側の1番後ろの席に、ガタイの良いオレンジ色というか金髪というよなボーズ頭。 眼鏡をかけ眉は細く、あごにはヒゲ。 どう見ても高校生とは思えないやつがそこにいた。 初め徹は、自分は見てはいけないものを見たように、すぐに生徒手帳を見直した。 定時制の奴らが間違えて入って来たのかと徹は思ったが、横目で見てみると、ユルユルのネクタイ、胸元はだけたワイシャツからは金のネックレスが見える。 指にはゴツい指輪。 腕には高級そうな腕時計。 入学式に参加する一般的な生徒とは掛け離れた服装だが、一応、全日制の生徒らしい。 『どや、間違えなかったか?』 『あぁ、大丈夫だったよ』 押し殺したような声で徹は言った。 『なぁ~、そりゃそうだよなぁ~、間違えてたらえらいこちゃ。おまえはんどこの出身なんや。みんな、わしが話しかけても答えを返してくれんのや。やっぱり、この話し方がいかんのかのぅ。なるべく訛らないようにはしてるんやけど。おまえはんが初めて答えてくれたわ。』 この水を打ったような教室の元凶はこいつだった。 他のクラスでは和気あいあいとしてるのに、うちのクラスだけが静まり返ってる。 みんなこのボーズ頭と関わりたくないと思ってるのが、徹にもわかった。 しかし、ここまで言われて無視するわけにもいかない。 『上方中学…だけど』 徹は静まり返る教室で独り言のように言った。 『上方中かぁ~。あの有名な繁華街の近くやな。』 あごひげを触りながらボーズ頭は言った。
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