カフカの『変身』のゴキブリならぬ

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      1   ひどく頭痛がする。 吐き気もかなりある。   …またいつもの自律神経の不調が来たか、と自分は思った。         *   自律神経失調症というやつなのか、それとも不安神経症とか、他の精神神経科の病気の一種なのか、自分では正確な病名はわからないのだが、理不尽なストレスや、腹がすいた状態をそのままにしておくとこの症状が起きやすい、ということだけは何となく気づいていた。   一度医者に行った時は、いろいろ検査しても異常なし。 その時の症状は、吐き気と頭痛の他に、膝の痛み、胆嚢のあたりの腹の痛みもあったので、ある大学病院の整形外科と内科の診察をまずうけたのだ。   今思えば、そこで優秀な内科医に巡り合えたおかげで、ともかく原因らしきものだけはわかった。「メンタル科のほうに行ってみなさい。紹介状を書いてあげるから……」   最初は、えっ? って感じで、何のことやらわからなかった。   吐き気や頭痛、そして腹痛、膝の痛み。 それで、なぜ精神科?   自分は半信半疑の納得いかない気持ちのままメンタル科に行き、やたらめんどくさい長々としたアンケート用紙のようなものをうんざりしながら書いたあと、メンタルの先生の診察を受けた。  そしてその日は、脳波やらMRIやら、その他諸々の検査をさせられた。   数日後、結果を聞きに再び訪れたが、医師は「別に異常はないですね。薬を出しておきますから、効くかどうか、様子を見てみましょう」と言った。   自分は「病名は何なんです?」とたずねたが、その医師は「ドーパミンとかセロトニンとか、いわゆる神経伝達物質が正常に分泌されてないんですね、おそらく」と言った。   自分はそれ以上たずねなかったが、今思うと、本当に確かな病名を診断することはできなかったんだと思う。 不安神経症とか統合失調症とか典型的な病名の症状というのはむしろ少数なんだそうだ。   ともかく自分は、処方された薬を飲んでみた。 するとまるで計ったように効いた。   自分は、ありがたいという素直な感謝の気持ちを、担当医に抱いた。 ……が、その気持ちもしだいに薄れていき、しばらく飲み続けたあと、飲むのをやめてそのままほおっておくようになった。
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