カフカの『変身』のゴキブリならぬ

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しかしその後しばらくして、同じような症状が起きた。 だが、またあの薬を飲めば治るわ、という気楽さからか、しばらくすると治まった。 けれどもまた、忘れた頃に同じような症状が出た。  そんなことを繰り返していくうちに、どんな時に症状が起きるのかという自分の病気の特徴がわかってきた。   すなわち、過度のストレスと腹をすかせた時だ。  過度のストレスは、敵に襲われるかもしれない極めて危険な状態、そして腹をすかせた時は、飢餓状態であると自らの生体が認識し、体を非常事態にセッティングすべく、脳に大量のドーパミンを分泌せよ、と指令するのだ。 ドーパミンの過剰分泌は、覚醒剤の副作用のように、ひどい頭痛や吐き気をもたらし、さらにひどくなると過呼吸になったりもする。   しかし、正常な、健全な社会生活を営む以上、ストレスなんて友達みたいなものだし、規則正しい食事がとれる職種なんてのもむしろ少数派なのではないだろうか。   だから、だましだまし自分の病気とうまく付き合うしかないな、と悟りの気持ちに似た感じでいた。   従って今回も、例のやつがまた来たな、ぐらいにしか思わなかった。 今日は仕事も休みの日だし、このまましばらく眠ろう、と。 昔の楽しかった思い出でも思い浮かべながら……          †   まどろみの中で、頭痛はしだいにひどくなっていった。 吐き気もはんぱなくなっていった。これはまずいな、起きて吐こうかな、と何度か思ったが、そのうち少しずつ楽になってきた。
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