夢と現との狭間にて

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ある日、夢を見た。 視界が真っ白く抜けてぼやけた世界。 真夏の真昼のように、じわじわと体が乾いてゆくような眩しい白さ。 その白く荒んだ世界で、ぼくは必死に、誰かを呼ぼうとしていた。 だが、叫んでも、叫んでも、ぼくの声は届かない。 やがて咽が痛くなりぼくは人を呼ぶのを諦める。 そこで、目が覚めた。 慌てて周りを確認する…… ぼくの部屋、いつものベッドの上だ。 白くないどころか、かなり散らかっている。 「学習机」と呼んでいるこたつの上には、昨晩、途中で投げ出した大学入試の問題集。 あ、炭酸飲料のペットボトルはキャップをつけ忘れている。 机の上を片付けようとして布団から出て、ぼくは驚く。 手をついたシーツが、異様なほどに濡れている。 ぼくが? 自分の寝巻きを触れて確かめる…… 汗だくだ。 まるで真夏の熱帯夜を通り抜けたかのように。 今は、冬なのに? ……しかも、これ、初夢だよ…… ため息をついて、布団から出る。 冬の寒さが、濡れた服を即座に凍みさせる。 「寒っ」 そう、つぶやいて、咽に違和感を覚える。 咽が、乾いてヒリヒリ痛んでいる。 咽? 咽が渇いて痛かったのは、夢ではなく? ぼくは起き上がり、炭酸の抜けてべとついた液体を、一気に飲み干した。 わずかばかりだけど、咽の痛みをごまかしたぼくは、ベッドの、汗ばんでいないはじっこへと丸くなり、再び眠りにつこうとする。 でも、頭の中の、どこかが妙にもやついていて、結局、連続した睡眠というものを味わうことはできずに空が白んだ。 これが、その夢、との、最初の出遭い、だった。
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