美咲の章:1.それだけのこと

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屋上に着くまでの間、私はなんと言うべきか考えた。 告白はしなくてもいいと思う。 だけど、わざわざ呼び出してまでの用事を今更つくれない。 なんていう? 好きです? でも、どこが好きなのって聞かれたらどうしよう。 声? 確かに悪い声じゃない。 でも、そんなに注意深くは聞いたことない。 話し方? でも、彼が話しているのをちゃんと聞いたことがあるのは授業中だけで 先生の前で改まって話すのは当然。 じゃ、素直に顔? 軽すぎる。 最悪。 結局、答えが出ないまま、私は屋上に着いた。 おそるおそる重いドアを開くと彼の姿。 ドアのガチャという派手な音に彼が振り向く。
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